藍川由美「倭琴の旅」

やまとうたのふるさとをもとめて倭琴と旅をしています

梨街道と神社

今月26,27日、田沢湖周辺で演奏修行をしてきました。
今年の夏はあまりに暑く、ヘルメットを被っての遠出はもちろん、
10kg以上の楽器ケースを背負って歩く気力も失せてしまいました。
長く休んだ上、レコーディングで声楽家の発声に戻していたため
はたしてどんな声が出るのやら…と、かなり不安でした。
 
久々の野外演奏での声は、かつて一度も通ったことのない道から
息が漏れてくるようで、フワフワしてました。
これは…高校時代からずっと目指していた声じゃありませんか。
でも、まったくメリハリがつきません…。
 
いやいや、慌てる乞食は貰いが少ない!?
取り敢えずは、この道を究めようと決めました。
が、今また声楽家の声に戻さなくてはなりません。
ならば、タイプの異なる神楽歌を歌って様子をみておきたい。
 
ちょうど毎日つくる「梨の紅茶漬け」で使う白井の梨が、
9/25を最後にスーパーの産直コーナーに入荷しなくなっていました。
在庫を確保すべく直売所へ電話するも「今年は終了」と言われ続け、
今朝、やっと一軒「今週末まで営業」のお店が見つかりました。
 
音域の広い神楽歌《其駒》を歌いたいので、直売所を地図で確認し、
駒形神社を探したら、白井市神々廻(ししば)にありました。
「シシバ」とはまた…。以前、行ったことがあります。
私は海人族地名かと思いましたが、諸説あるようです。
 
予報通りの曇り空ですが、日差しが強く、洋服を着ていても痛いほどです。
「梨街道」と呼ばれる国道464号線沿いの直売所はどこも閉まっていました。
西白井駅に近い直売所です。
こちらも豊水は終わっていましたが、新高ならあると聞いて来ました。
うわっ、さすが新高だけあって大きい!!
5個入り(3,500円)、6個入り(3,300円)とも、計5kgが目安だそうです。
こちらの7個入りは3,100円。
5個入りを買うつもりだったのに「キズありのお買い得があるよ」と教えて下さり、
3-4個入り1,000円の箱に次々と大きめの梨を追加して、満杯にしてくれました。
私はこのカゴにまだ入っていない巨大梨3個入りを大量に買い込んだ上、
オマケとして豊水の残りを頂いて大満足。
勇んで駒形神社へ向かいました。
おおぉ…「神々廻・船尾街道」!!
慶長7年(1602)創建の不思議な雰囲気の神社…と思ったら古墳でした。
なんで人のお墓の上に人工的建造物を置きますかね。
とはいえ、最初は気づかず、バイクで入れる道を探しました。
ありましたよ! ここを直進せず、左折しました。
古墳に上がってから振り返ると、こういう道。実にまずいですよね…。
こちらが拝殿で、左手がさっき見た鳥居。
とってつけた感がものすごい…。
拝殿の奥の本殿も撮ってみました。
古社ではなく古墳でしたが、せっかく来たので《其駒》を演奏してみました。
やはり圧のかからない声で歌えたので、これを定着させたいですね…。
↑ ここに全歌詞を載せたと思って見たら、半分しかありませんでした。
以下が全歌詞です。
神楽歌『其駒(ソノコマ)「或本ニ云フ、葦駮(アシブチ)ノ歌」
葦駮の や 森の 森の下なる 若駒率(ヰ)て来(コ) あしげぶちの 止良介(トラゲ)の駒
其駒ぞ や 我に 我に草乞ふ 草は取り飼はん 水は取り 草は取り飼はん
 
来た道を引き返していると、59号線沿いに石尊(せきそん)阿夫利神社の鳥居が!?
行きに信号待ちした時、この鳥居前で撮ったのが冒頭の画像です。
さっきも目についたし、時間もあるし、行ってみますか…。
この先を右折ですね。
えええ~?! よもやの下り!! 石尊って高い場所にあると思ってました。
石尊信仰って、言うまでもなく、神奈川県伊勢原市にある
大山阿夫利(おほやまあふり)神社を中心とする山岳信仰のことですよね?
古くは厚木市伊勢原市秦野市にまたがる大山(標高1,251m)山頂の
石尊大権現と山腹の大山寺が中心でしたが、明治の神仏分離令によって
新たに阿夫利神社が建てられたそうです。
「あふり」は、大山が雨降山(あふりやま)と呼ばれたことからもわかるように
雨乞いの神、農耕の神とされています。
石尊とは、山頂の岩に神々が降りるとの山岳信仰からくる名称でしょう。
大山寺は相模の山岳信仰の中心的存在で、関東各地に講社がありました。
それゆえ、関東には「石尊山」という名の山が数多くあるのです。
(吉野と熊野を結ぶ大和の大峰修験「金峰山」の関東版といったところでしょうか?)
 
石尊山
標高 1,668m 長野県軽井沢町(浅間山南西麓ノ寄生火山)
標高 1,049m 群馬県中之条町(祠アリ)
標高 752m 群馬県みなかみ町(山頂ニ祠,山腹ニ弥生時代ノ人骨ガ出タ八束脛洞窟遺跡)
標高 594m 栃木県鹿沼市板荷
標高 571m 群馬県安中市(安中榛名駅ノ上)
標高 486m 栃木県足利市小俣町(石尊宮大山阿夫利神社アリ)
標高 481m 栃木県塩谷町飯岡(石尊神社アリ)
標高 421m 茨城県久慈郡大子町田野沢(栃木県黒羽町トモ)
標高 387m 茨城県日立市十王町友部
標高 348m 千葉県君津市黄和田畑(祠アリ)
標高 344m 埼玉県比企郡小川町笠原(祠アリ)
 
石尊信仰は関東平野を中心に広がったため、山岳信仰ながら平地にも神社があり、
「鮮魚(なま)街道」にある印西市高西新田の石尊阿夫利神社もその一つかと思われます。
当社の創建は明和2年(1766)で、祭神は石凝留命、岩裂命、日本武尊、根裂命。
社伝によれば、明和元年に銚子の海から引き揚げられた2つの青石を神輿に納め、
大山に奉納しようと村を出、相模へ巡行してゆく途中の或る夜、村吏の夢に
青衣の老人が二人あらわれ、里の鎮守として合祀せよとの御託宣を受けたため
引き返し、翌明和2年6月27日に現社地の頂へ奉斎したとのことです。
こんもりの全景を見たくて、社頭から左の道に入ってみました。
何だか、ここはかつての香取海で、江戸時代には泥濘地だったのではないか
という気がしてきました。すると、ぽっかり浮かぶ小島? 或いは古墳?
いつもながら妄想は尽きることを知りませんねぇ…。
足下にとまったトンボが、バイクで走り出すと先導してくれました。
飛ぶときれいなブルーに見えました。シホカラトンボかな?
さ、約1時間かけて帰るとしましょう。
マスクをして走っているのにオシロイバナが香ってきました。
江戸時代に入って来た熱帯アメリカ産の白粉花の季語は仲秋。
近年「百年に一度の」「前代未聞の」「未曾有の」災害に
見舞われることが増えた日本人の体内時計は狂いがち。
季節感も薄れてきてますね。