藍川由美「倭琴の旅」

やまとうたのふるさとをもとめて倭琴と旅をしています

常陸の崖地

 
このところ利根川の南側にばかり行ってたので
1/25は北側の"シマ"の崖地を見に行くことにしました。
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ずう~~っと「香取海」を走り、やっと丘に登ったと思ったら
すぐに下ります。振り返ると台地ではなく"シマ"でした。
そんな一つ目の"シマ"を走っていると、右手に竹林がありました。
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そしてこの人工的な窪地に小さな社殿があったのでバイクを下り
石碑を確認したら「金毘羅山」でした。
金毘羅大権現」でも「金刀比羅神社」でもなく、寺の山号
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このように周囲を丸く削り取って天井の無い洞を造成するやり方は
結構目にして来ました。ここは先を急ぎましょう。
目指すは稲敷市犬塚の月讀(つきよみ)神社です。
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犬塚の地名から犬養部の居住地が征服されたのか…と妄想していますが?
そういえば平將門の母方の祖父が縣犬養宿禰春枝でしたね。
霞ヶ浦周辺にも犬養氏が居たかどうか調べてみなくては。
 
茨城県南部の月讀神社では、つくば市樋の沢鎮座の月讀神社が有名です。
何しろ、かの間宮林蔵の両親が、なかなか子供を授からなくて
筑波郡伊奈村から直線で13km離れた当社へ参詣して林蔵が生まれたというので。
 
久しぶりに去年2/14のブログを読んだら、当時私はまだ
「朝廷が天照信仰ゆえ(?)月讀尊の神楽歌がないのだと想像」していました。
しかし、今は、記紀の編纂を命じた天武天皇が中国に倣って
ヤマト王権の度量衡や音律や暦を定め、神々や天皇の系譜を企図したため、
それ以前の、古い国風(くにぶり)のうたの歌詞にアマテラスやツキヨミや
スサノヲの名前が出てこないのではないかと疑っています。
 
アマテラスの歌詞はありませんが、アマテルはあります。
ヒルメやトヨヒルメなどの歌詞もあります。
 
古代の豪族が伝承していた歌には地方ごとの国風のタマ(言霊・威霊)
宿っているので、そのクニを治めるにはこれを手中にする必要があり、
それゆえ天武天皇が舎人や采女に歌を奉献させたとする折口信夫博士の説は
神道や神話に無関心だった私に神楽歌をうたう意味を教えてくれました。
 
国々には、国々を自由にする魂があつた。国々の実権を握る不思議な魂即、
威霊(マナア)があり、其がつくと、其土地の実権を握る力を得る。
 地方々々に伝承する歌には、其魂が這入つてゐて、其を歌ひかけられると、
其人に新な威力が生ずる。
采女・舎人が国風の歌を奉ると、天皇に威霊が著いたのである。
そこで、歌を献じた地方は、天皇服従する事になるのである。
(折口信夫『古代人の思考の基礎』より)
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犬塚月讀神社の社頭案内板にある十五夜にせよ二十三夜にせよ、暦が定められた
ことで成立したものですし、紀元前後、日本列島に百以上あったとされる
国々の歌に詠み込まれていないのは当然かな? という気がします。
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鹿島も香取も安房忌部も誕生していない時代から
日本列島に人々の営みがあったことは遺跡が証明してくれています。
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この崖地に住んだ人々は海洋民族だったのではないでしょうか?
香取海」を自在に往き来できる能力なしに暮らしは成り立ちません。
その証拠の一つが「五絃のコト」の出土で、
北部九州を中心に各地への広がりを見せたシカの海人の楽器です。
サキタマ古墳など関東で出土したコトは「四絃のコト」であり、
関東では唯一、常陸国でのみ「五絃のコト」が出土しているのです。
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香取海」から階段をのぼったところに祭祀場をつくったのは誰?
ここも、さっきの"シマ"にあった神社と同じように崖を丸く削ってあります。
しかも二段構え!?
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社殿に向かって右側へ進み、下を見ると、ここにも何かあったと思わせる平地。
左側からはさっき走ってきた道路の向こうに田園風景が見えます。
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最初の階段を登ると平地、次の階段を登ると社殿、その上が社叢です。
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今となっては道路にへばり付いている階段を登っただけなのに、この静けさ?
聞こえるのは小鳥のさえずりだけです。
香取海」をイメージして《さざなみ》を演奏してみたら
半円形の土手に音がうまく響き、何と55日ぶりに《神擧》を演りました。
《神擧》は秘曲だし長いので、人の気配がないところでしか演れません。
それに音響効果が良い場所だと楽に歌えますからね。
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演奏修行できたので気をよくして月讀神社をあとにしました。
このまま帰ってもよかったのですが、せっかく1時間も走ってきたので
「あんばさま」まで足を延ばすことにしました。
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小野川と小野川の支流を渡って道なりに東へと走りました。
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あの気になるこんもりは「神宮寺城跡」だそうです。
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話として知っていた場所に立つと、点が線に、そして面になる気がします。
南朝後南朝への興味も失っていません。
また吉野へ行きたいなぁ…と思いつつ走っていたら、3分足らずで
「あんばさま」こと稲敷市安波の大杉神社が目に飛び込んできました。
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相変わらず煌びやかです。掃除もさぞかし大変でしょう…。
そうだ、ここでトイレを借りておきましょう。帰りは1時間以上かかるので。
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あれぇ~~!? 凄すぎます~~!! トイレの中がシャンデリアだらけ。
各個室は名づけられたテーマの襖絵・天井画・シャンデリアで飾られています。
煌びやかなのは社殿だけではなかったんですね…。
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今回は境内社を見に来ました。競馬関係者に人気の。
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住所の「安波」と「安馬」を掛けているようです。
その名も勝馬神社ということで、賽銭箱の横にはこんなものが!?
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馬券とかも入ってますか? そして、何と、ニンジン!?
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しかし、サルがウマを曳くとは…(何を暗示?)!?
 
数々の境内社を含め、社殿は駐車場よりも高い場所にありました。
真北に葦船神社という境内社があるようなので駐車場経由で行くことに。
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駐車場入口に↑「あんば天狗の森」!? 最奥に↓葦船神社
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資材置き場のようでもあります。
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祭神はコトシロヌシのようでしたが、偶像崇拝はどうも苦手。
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振り向くと、右に安穏寺、左が大杉神社でした。
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まるでここだけが春?