2013年10月、2億年前は海底だったという安久田の里を訪れました。
「あく」と聞けば
悪志赤崎(あくしあかさき)~」や、「しほやく→しほあく→しあく」の語源をもつ
塩飽(しわく)諸島など、海辺や海岸にまつわる地名が浮かびます。
この地に大滝鍾乳洞と縄文鍾乳洞があります。
経営はともに郡上観光(株)のようですが、縄文鍾乳洞は土日のみ開くらしい…。
総延長2kmという大滝鍾乳洞は東海地区最大級の石灰洞窟で、公開部分は約700m。
ここ大滝鍾乳洞入り口の標高は約400mで、内部の高低差は100mもあるそうです。
これは…かなり滑りやすそうなので要注意。
早々にゴージャスな「竜王洞」を見られましたよ!
この竜=龍が今日のテーマです。
龍は伝説上の生き物とされています。
起源は中国で、インドのナーガの類(蛇神・水神)にも影響を受けているとか。
仏教では二頭の竜が釈迦生誕の際に清浄水を灌ぎ、その後も守護したとされ、
人はなぜ架空の生き物を神格化し、信仰の対象にしてきたのでしょうか?
先ずは水に濡れた狭隘な通路を進みます。
しかし楽器ケースを背負ったままでは通れません。
歩いているうちに、だんだん水音が近づいてきました。
これが最奥部にある「大滝」でしょうか? 水が細くてハッキリ写りませんが。
たしかに水が落ちています。そしてすぐ右の壁面には彫刻が!?
絶対に古いものではありませんよね?
そもそも大滝鍾乳洞が発見されたのが50年ほど前らしいので。
案内板や口頭での説明によれば、台湾・花蓮から日本に留学していた彫刻家
柳順天氏がこの滝を見て龍を感得し、洞内の自然石に不動明王を彫りたいと
申し出て、5ヶ月のあいだ夜中から朝にかけて刻まれたそうです。
「御神水」とありますが、恐ろしくて飲めませんでした。
ただ、左下の水の流れを描いたような造形が自然のものかどうか気になりました。
階段を上って「大滝」をあとにします。
「大滝」は地底の滝と書いてありましたから、ここからは上りなんですね。
と思いきや、突然の下り?!
えっ、下が見えませんよ!! この落差が大滝鍾乳洞の魅力なのでしょうけれど。
下る途中も見どころがたくさん!! 右奥に「象牙の林」ですって!?
こちらのネーミングがなかなかにポエミーなのです。
これは…、たしか「デコレーションケーキ」!?
えええ~~、また下り?
やっと下り終えたところに「出口」の表示が!!
ところが、そうは問屋が卸しません。更に数分歩いてやっと外へ。
ちょっとした冒険でした。混み具合にもよりますが、私は約40分でまわりました。
それにしても、入り口とは全く別の場所へ出たのでビックリ!? しましたが、
人気スポットなのに変に観光地化されず、自然がいっぱいで楽しめました。
縄文鍾乳洞の方は、もっと自然のままなのだそうで、
ライトアップされていないため、コウモリが子育てをしているそうです。
入り口でコウモリがぶら下がっているのを見たら「当たり」だとか!?
大声を上げてしまいそうな自分が怖いものの、土日に行きたいと思って調べたら
現在は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため「臨時休業中」でした。
さて、今回は龍の話です。
この架空の生き物が、龍神と神格化されたのはなぜでしょう?
中国の王朝が紀元前の"陰陽五行"を専門の役所で活用していたのに倣い、
"陰陽"では、全ての存在は相反する二つの性質を持つとされ、
例えば男・奇数・天は"陽"に、女・偶数・地は"陰"に分類されます。
"五行"は人の生活に不可欠な「木・火・土・金・水」の五つの元素、
「行」は動く、めぐる、と意味づけられます。
日本は明治に西洋の流儀が入るまで(飛鳥時代~江戸時代)古代中国に端を発する
上記の自然哲学の思想を根本に据えていましたが、明治5年に政府が
しかしながら、千年以上"陰陽五行説"を根底に運営された国の政治体制や医学、
四季の変化などを西洋の物差しで測ることがナンセンスなのは言を俟ちません。
万物は「木・火・土・金・水」からなるという"五行説"において
最も重要なのは、5つの元素が互いに影響し合い、その生滅盛衰によって
天地万物が変化し、循環するとの考え方ではないでしょうか。
5種類の基本要素を単独で捉えるのではなく、
相互作用により変化しゆく過程や状態が重要だと思われます。
"陰陽"という単純な理論に"五行"が加わって複雑さと深みを増した
"陰陽五行説"は、紀元前から政治・経済・医療など
生活のさまざまな場面に生かされてきたわけですから。
五行 | 五方 | 五色 | 五時 | 五龍 | 五声・五海・五音・五腑 etc. |
---|---|---|---|---|---|
木 ↓ 火 ↓ 土 ↓ 金 ↓ 水 |
東 ↓ 南 ↓ 中央 ↓ 西 ↓ 北 |
青 ↓ 赤(紅) ↓ 黄 ↓ 白 ↓ 黒 |
春 ↓ 夏 ↓ 土用 ↓ 秋 ↓ 冬 |
青龍 ↓ 赤龍 ↓ 黄龍 ↓ 白龍 ↓ 黒龍 |
(讃岐の「五色台」の5つの峯に空海が青峰・紅峰・黄ノ峰・白峰・黒峰と名づけたことに悩んでいます。 青峰は東にあるので〇、しかし紅峰は青峰より北で✖。その紅峰の南に黄ノ峰があり、紅・黄・青は「五色台」のほぼ東端に縦一列に並んでいます。黒峰は北にあるものの紅峰よりは南で、白峰は西ながら青峰よりも南です。 自然の山なのでピッタリ東西南北を合わせるのは無理だと思いますが、どういうつもりで五峰に色の名をつけたのでしょう?) |
単独で取り出して信仰することに意味があるでしょうか?
私には雑多な渡来音楽を取捨選択しつつ独自の「雅楽」を創り上げた日本人が
そんな愚かなことをするとは思えません。
すると、元々我が国にあった原始宗教と結びついたのかも知れません。
とはいえ、龍神に関しては諸説があり、現在は明治政府が迷信として
廃止した"陰陽道"以上に混沌とした状態にあるようです。
人が、なにか人間とは違うもの、人間を超える能力をもつものに憧れたり
縋ろうとしたりする気持ちはわからなくもありません。
キリストにせよ、龍神にせよ、超越した神として信仰されているのでしょう。
しかし、今ちょっと検索しただけで、龍神が見えると豪語されている方や
10万部以上売れた『「龍使い」になれる本』を書いた方がいらしてビックリ!!
とりあえず、その龍神や龍はどこのどなたなんですか?
見た目はどんな姿ですか?
他方「九頭龍」は日本由来のようです。
箱根神社の伝承では、災厄をもたらし「毒龍」と呼ばれた「九頭龍」を
萬巻上人が法力で調伏すると、人々に利益をもたらす龍神になったとか。
戸隠神社の伝承では「九頭龍」とは九つの頭を持つ「鬼」というか怪物で
849年に修行者に封印されて「九頭龍大神」という善神になったのだとか。
出ましたね「鬼」=先住民。
いずれも先住民が朝廷に討伐され支配下に入ったことの暗示でしょう。
出自もわからず恃んでよいものでしょうか? 親の仇だったらどうする?
…なんて、私は自分の人生を舶来龍王にも誰にもたのんだりしませんが。
ただし縄文神とされるミドゥチになら会ってみたい気がします。
現在なら水主神社や蛟蝄神社や御社口社の社名に可能性があるかも!?
ですが、蛇が龍になったなどの龍神伝説があると祭祀が変わってるかも?
(これで、台湾の彫刻家が大滝鍾乳洞の滝を見て龍を感得した話が納得できました)
説と同じく「霊」をあらわすとの考えに心惹かれています。
長々と書いたのに、スッキリした結論に至らず、申し訳ございません。