藍川由美「倭琴の旅」

やまとうたのふるさとをもとめて倭琴と旅をしています

「伊福部昭の音楽」シリーズ無料開催のお知らせ

いよいよ本シリーズも最終回となります。
今回取り上げます《二つの性格舞曲》は、日本では2,3度しか演奏されていません。
それを《ヴァイオリンソナタ》の前に演奏することに意味があると考えています。
《二つの性格舞曲》はアムステルダム・デュオの委嘱で1955年に作曲されました。
1956年10月1日にアムステルダムで初演されたのち、1961年に改訂されています。
 
《二つの性格舞曲》の自筆スコア表紙にあるように、
「第一の性格」は《郢曲(えいきょく)鬢多々良(びんたたら)(1973)のメインテーマになり、
第二の性格」は《ヴァイオリンソナタ(1985)に使われています。
 
伊福部昭氏は、アムステルダム演奏家に「日本音楽の代表的な音律」を紹介し、
次に、その音律を使ってさまざまな楽器編成による楽曲を書いたわけです。
 
伊福部 昭 の音楽 vol.6
2024年 5月31日(金)18時30分開演 (18時開場)
ルーテル市ヶ谷ホール (入場無料)
 
『Deux Caracteres』二つの性格舞曲 (1955/1961)
ヴァイオリン:堀内 麻貴/ピアノ:蓼沼 明美
 
『SONATA per Violino e Pianoforte』ヴァイオリン・ソナタ (1985)
ヴァイオリン:花崎 淳生/ピアノ:百武 恵子
 
ハープのための箜篌(くごか) (1969/1989)
ハープ:木村 茉莉
 
摩周湖 (1992)
ヴィオラ:百武 由紀/ヴォーカル:藍川 由美/ハープ:木村 茉莉
 
映画親鸞劇中歌「わがこひは」 (1960)
歌+琴:藍川 由美
 
 
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私はこれまで、音楽家としても、一人の人間としても、
伊福部先生ならどうなさるか…という視点を軸に生きてまいりました。
それは先生の御指導の一場面だけを切り取っての判断ではありません。
25年にわたり御指導いただいてきた変遷を基に考えを巡らせています。
 
1985年に初めて《平安朝の秋に寄する三つの詩》についてお訊きした際、
伊福部先生は「絶対に演奏されたくない」と仰いました。
それが《蒼鷺》を書かれていた2000年頃には
「私は《平安朝~》の楽譜を破棄したけれど、死後どこからか楽譜が出てこないとも
限らない。もし楽譜が出てきたら演奏に堪え得るかどうか、あなたが判断して下さい」
と仰るようになりました。
 
また、何度も「これは男声でないと書けない…」と仰った《蒼鷺》を
最終的には「男女に係らず、あなたには胆力があるから《蒼鷺》の世界観に
圧し潰されるようなことにはならないでしょう」と作曲して下さいました。
 
こうした25年にわたる先生とのやりとりの、どこか一部分だけを切り取って
「こうでなければならない」と言うことに意味があるでしょうか?
まさか前言を翻した先生を嘘つき呼ばわりする人はいないでしょう。
そして、いったんステージを離れた私も、《平安朝~》の著作権侵害を受けて
伊福部歌曲の演奏に舞い戻りました。
 
他方、1955年作曲の《アイヌ叙事詩に依る対話体牧歌》への伊福部先生の
こだわりには、ただならぬものがありました。
 
アイヌ民族は、歌と伴奏と踊りを一人で演ります。それゆえ一人で太鼓を
叩きながら歌うスタイルで作曲したものの、演奏してくれる人がいません。
そこで、1956年にティンパニ4面で伴奏するよう書き替えたものの、元々
人と呼吸を合わせながら演奏する要素がないため、しっくりきません。
太鼓が無いなら、机を叩きながらでもいいから一人で演って下さい」
と言われ、何度も一面の太鼓による奏法を御説明くださいました。
これを2024年2月4日に演奏し、楽曲解説を残したいと思います。
 
2023年11月14日に現在鳥取市にお住まいの御長女をお訪ねして、2024年2月4日に
1955年作曲の太鼓版《アイヌ~》を演奏しますとお伝えしたところ、玲子さんが
「藍川さんも父に話を聞いてるでしょうけど、私も覚えていることが沢山あるのよ」
と仰って、私が知らなかった話を聞かせて下さいました。
 
「あるとき父が『《アイヌ叙事詩に依る対話体牧歌》は本来、一人で演奏するんだ』と
言って、シントコを叩きながら身振り手振りで歌い始めたのよ。すると、ご存知のように
母は舞踊家だったから、父の仕草を面白がって笑いが止まらなくなり、私は転げ回って笑う
母に気をとられてしまって、父の方をあまり見ていなかったのが残念でならないわ…」
「それは惜しいことをしましたね。ところで、先生のお宅にシントコってありましたか?」
「無いわよ。シントコに代わるものなら机だって何だって構わないのよ」
「それなら私も何度もそうお聞きしました」
「『その辺の物を叩きながら即興でやるものだ』って言ってたわ」
よかった…! やっと私以外にも伊福部先生から《アイヌ~》の演奏法について
聞いていた方がおられたことが判りました。
 
作曲者からは「1955年版をコンガ伴奏にしたのは、シントコでは訳がわからないと思い、
取り敢えず楽器屋さんで手に入りそうな楽器名を書いたまで」とお聞きしています。
また「アイヌ民族シントコを叩いて歌うイメージで作曲したけれど、
実際には少し毛が残っている動物の革を張った太鼓が向いている」と
仰っておられ、たまたま縄文土器のレプリカに革を張って作った太鼓を
私に贈って下さる方があったので、2011年3月27日に初演させて頂きました。
 
その太鼓で2024年2月4日に再演しようと練習を重ねていたところ、
突然、土器に革を張るために開けられた穴から穴へとヒビが入り、
その革を張った部分がパカっと外れてしまうのも時間の問題となりました。
選択肢としては、楽譜に記載されたコンガか、アイヌ民族シントコ
かなりの数のコンガを比較検討した結果、キューバよりもアイヌ
との結論に達し、シントコを購入しました(2023年12月15日)
もちろん↓このような博物館級のシントコは入手できませんけれど。
フィレンツェの博物館に収蔵された行器(シントコ)
(Shintoko, cofano di legno laccato, di importazione giapponese, per riporvi gli oggetti piu preziosi.)
 
諦めが悪いため、三条の古美術商に「江戸時代のシントコが見つかったら知らせて下さい」と
お願いしておいたら、金蒔絵と梨地の美術品のような対の完品が見つかりました(2024年1月9日)
 
2023年 6月28日(水) 18:30~ vol.4
2024年 2月 4日(日) 17:00~ vol.5
2024年 5月31日(金) 18:30~ vol.6
曲目etc. 詳細はこちら↓
 
vol.4~vol.6のコンサートはライヴ録音を主目的としております。
それゆえ収容人数を半減し、入場無料とさせていただきました。
必ず隣席を空け、座席に手荷物等を置いてお座り下さるよう、お願い致します。
 
vol.6(5/31)への御入場を希望される方は、4/1~15の間にお申込み下さい。
抽選の上、2024年4月末~5月初頭に入場用プログラムをお送り致します。
プログラムの発送をもちまして当選のお知らせとさせて頂きます。
お申込み専用ページは ↓ こちらです。
(当ブログでのみの御案内となります)
 
プログラムに御芳名を記載してお送り致します。
記名された御本人以外の入場はできません。譲渡は御遠慮ください。
(受付にて御本人確認をさせて頂く場合があります)